この記事の目次
ゴールデンウィークくらいからシュノーケリングをする人はだんだん多くなりますが、毎年その分事故も発生しています。今回は、この時期になると必ず起こるシュノーケル中の水難事故を防ぐため、よくある事故の原因と危ないと思った時の対処法をまとめてみました。
シュノーケル中の事故の原因は、ほとんどが何かにびっくりしてパニックになることです。今回は一般的にパニックになりやすい状況になった場合どのように対処するかを詳細にご説明しますので、いざそういう目に遭った時の参考にしていただければ幸いです。
なお、コロナ禍での海水浴は当サイトでは積極的には推奨していません。夏が近付くにつれ海関連の記事の関心が高まっているようなので、あくまで参考までに記事にしました。2022年は、コロナの影響で海開きをしない海水浴場もある可能性があるのでご注意ください。監視員のいない海に自分で行って泳ぐことも毎年水難事故の原因になっているので、ライフセーバー並みの泳力がない限りは行かないことをおすすめします。
また、当記事の内容を実践して事故に遭うなどしても当サイトでは一切責任を追うことはできません。自己責任でお楽しみください。
シュノーケル中の事故の最大の要因は「パニック」
先ほども書きましたが、シュノーケル中の事故の最大の原因はパニックになることです。正直なところ、普通に泳げる人ならパニックにさえならなければよほどの原因がない限り水面では溺れようがありません。
では何で毎年水難事故に遭う人がいるのかというと、ほとんどは以下のいずれかの原因で焦った結果息ができなくなり溺れてしまうからです。
- 足がつってパニックになる
- マスク(ゴーグル)に水が入ってパニックになる
- シュノーケル(筒)に水が入ってパニックになる
- たまに発生する大きな波が顔や頭にかかってパニックになる
- 急流や離岸流に巻き込まれてパニックになる
- 自分の水着や道具が何かに引っかかってパニックになる
上のような目に遭わず安全なシュノーケリングしかしたことがない人は「そんなことで溺れるなんて泳ぎが下手なだけじゃないか」とか「自分は大丈夫」と思うかもしれませんが、実際このような状況になった時本当に大丈夫だと言えるでしょうか?人は、自分が経験したこともないことについて大丈夫だと言い切ることは不可能です。
大事なのは、上記のような目に遭うのを避けることではなく、いざそういう目に遭った時にいかにして冷静に対処するかなのです。もちろんそういう目に遭わないことに越したことはありませんが、長いこと泳いでいれば上記のどれかには必ず遭遇します。
実際私は上のような状況は全て経験したことがありますが、長年の経験から冷静に対処する方法を知っているので特に何事もなくその後も楽しくシュノーケリングを続けています。
この記事では、上のような状況に陥った時どうすれば事故に合わないで済むかをご説明します。
なお、私はライフセーバーや水中アクティビティのプロではありませんが海では何百回も潜ったことがあり、時間ができればライフセーバーのライセンスを取得しようと思っています。海のことについては一般の初心者よりは知っているつもりですので、その経験から当記事を書いています。
ちなみに、前に沖縄でシュノーケリングツアーに参加した時私の泳ぎを見た新人のインストラクターから何かあった時は助けてほしいと言われたことがあります(笑)。
シュノーケル中に起こったトラブルの対処法
では、実際にパニックになりうる状況を想定し、それぞれの対処法をご説明します。
足をつった時→フィンの先を手前に引っ張るか手だけで泳ぐ
体が冷えていたり準備運動が足りないと泳いでいて足をつることはよくあります。足がつってしまうと痛いので焦るかもしれませんが、そんな時に足を動かすと余計に痛くなってしまいます。水中で足をつってしまってもパニックになって暴れようとはせず、まずは冷静に以下のいずれかの行動を取ってください。
- シュノーケルをくわえたまま水面に顔をつけてじっとする
- シュノーケルを口から外してあおむけに浮いてじっとする
こうすれば溺れることはまずありません。この状態で一旦心を落ち着かせます。
あおむけになる時に口からシュノーケルを外すのは、シュノーケルをくわえたまま仰向けになるとシュノーケルの先端が水に浸かって水を吸い込んでしまうため、逆に溺れてしまうからです。
落ち着いたらシュノーケルをくわえて水面に顔を付け、うつぶせで水に浮いたままつった足の爪先を手前に引っ張ります。フィンをはいている場合、フィンの先を思い切り手前に引っ張ってください。バディ(一緒に泳いでいる人)がいる場合、その人に手伝ってもらったりつかまったりするといいでしょう。
もしそれでも改善しない場合一度水から上がることをおすすめしますが、岸に上がるにしても足を動かして泳ぐと足が痛いのでそんな時は手だけで泳ぎましょう。足は動かさなくても手だけでも十分に泳ぐことができます。足は、つっても動かさなければ痛みは和らぐので、冷静に手だけでクロールや背泳ぎで岸に戻るのです。バディがいるなら引っ張って岸まで連れていってもらうのもいいですね。なお、背泳ぎの場合はシュノーケルは口から外してください(マスクは海水が目に入って痛いので付けたまま)。
私の場合、両足がつってどうしようもなくなることはよくありますが、岸に上がるとせっかくの時間がもったいないので手だけでそのまま泳ぎ続けます(笑)。ただ、潜ると足が痛いですが・・・。
足がつるのを防ぐために、泳ぐ前は水分や塩分を十分に取り、準備運動をしましょう。
シュノーケル(筒)に水が入った時→息を強く吐き出す
普通に穏やかな海で泳いでいても、自分の手足が跳ねた水や急な高波がかかってシュノーケル(口に加える筒)に水が入ることはよくあります。水難事故の多くはこれでパニックになって溺れることが原因なのではないかと思いますが、シュノーケルに水が入っても焦らなければ何も危険なことはありません。
多少海水を飲んでもすぐに命の危険があるわけではないので、シュノーケルに水が入っても絶対に焦らず以下の行動を取ってください。
- シュノーケルをくわえたまま強く息を吐いてシュノーケルから水を出す(シュノーケルクリア)
- すぐに水面から顔を出してシュノーケルを口から外す
シュノーケルクリアは、少し練習すればすぐにできると思います。難しい場合は、とにかく水から顔を出してシュノーケルを口から外しましょう。頭が水から出た状態でシュノーケルを外せばシュノーケルに入った水がそれ以上口に入ることは物理的にあり得ません。
もしシュノーケルに水が入った時にむせてしまった場合も、パニックは厳禁です。シュノーケルをくわえたままでも咳をすることはできるので、焦らずそのまま落ち着くまで咳をしましょう。私も、たまに突然水が入ったり喉が痛くなってむせることはありますが、普通にシュノーケルをくわえて泳ぎながら咳をしています(ダイビングの時もレギュレーターをくわえたまま咳をします)。
もしどうしても水が入るのが怖いという人は、ドライスノーケルという便利なアイテムもあります。これは、シュノーケルに水が入りそうになると自動的に先端の弁が閉じて水をシャットアウトしてくれるというものです。心配な人は買ってみるといいと思います。
急な高波が顔や頭にかかった時→特に何もしない(焦って暴れない)
これも、上のシュノーケルに水が入った時と同じです。穏やかな海でも急な高波が顔や頭にかかることがありますが、顔や頭に水がかかっただけでは人は死にません。では何故それで事故が起こるかというと、シュノーケルに入った水の出し方が分からず窒息したりパニックで暴れて溺れるからです。
もし急な高波などが頭にかかっても、頭が水面に出るまで焦らずじっとしていてください。シュノーケルに水が入った時は息を強く吐き出すか水面でシュノーケルを口から外します。
「でもじっとしていたら水中に飲み込まれちゃう!」と言いたいかもしれませんが、何もしなければどんどん水中に引き込まれてしまうような危険な波や流れ(ダウンカレント)がある海ではそもそも泳がないでください(笑)。
たまたま1度だけ高波が来た以外は穏やかな海なのであれば、じっとしていればすぐに頭は水面に出ます。そういう穏やかな海でも水の中から頭を出せないなら、それはあなたが焦って不必要に暴れているからです。人間は力を抜いてじっとしていれば水に浮くのです。
ただ、シュノーケルを付けていないならうつぶせには浮かないでくださいね。水面に顔を付けたままになるので窒息します。
マスク(ゴーグル)に水が入った時→マスクを浮かせて水を出す
マスク(ゴーグル)は、顔の形に合わなかったりゴムが劣化していると隙間から水が入ってしまうことがあります。また、口を開けたり笑ったりすることでも鼻の横に隙間ができて水が入ります。マスクに入った海水が目に入るととても痛いので焦ってしまうかもしれませんが、マスクに水が入っても水面にいればシュノーケルで息はできます。
シュノーケルとマスクは独立しているのでマスクに水が入ってもシュノーケルでの呼吸には全く影響ないのですが、目に水が入っただけでも初心者は焦ってしまうものです。
そんな時も、必ず焦らずまずは落ち着いて息をしてください。目が痛ければ静かに浮いたまま目を閉じても大丈夫です。そして水面に顔を出し、マスクの下側を持ち上げて水をそこから出すのです。
もしくは、スキューバダイビングをしたことがある人なら知っていると思いますが、マスクの上(おでこ)の部分を手でおさえて鼻から強く息を吐き出すことでもマスク内の水は出すことができます。これをマスククリアと言います。普通は水中で垂直な体勢の時(潜っている時)に顔を上に向けて行うものなのですが、水面に対して水平に浮いているシュノーケリングの場合も、うつぶせのまま顔をやや上に向ければマスククリアをすることができます。
マスクに水が入らないようにするコツは以下の通りです。
- 顔に合ったマスクを選ぶ
- マスクのゴムが劣化していないことを確認する
- マスクをする時に髪を挟まないようにする(少しでも挟まっていると水が入ることがあります)
- 泳いでいる間にずれないようにする
私なんて、マスクに水が入るどころかダイビングで船から飛び込む時にマスクをおさえるのを忘れて水中でマスクが完全に頭から外れたこともありますよ(笑)。船から飛び込む時は、マスクを抑えないと飛び込む衝撃でマスクが外れてしまうことがあるのです。でも、外れた瞬間は目や鼻に海水が入って痛いですが、水面に顔を出せば何も危険ではないということを覚えておいていただければと思います。
離岸流に流された時→流れに逆らわず横に向かって泳ぐ
最近では離岸流という現象もよく知られるようになりましたが、これは岸に寄せた波の力が一気に岸から沖に向かって引く時にできる流れのことを言います。場合によっては非常に早く、あっという間に沖に流されてしまうため、毎年これで溺れてしまう人がいます。
ですが、離岸流は帯状に発生するという特性上、その帯から出てしまいさえすれば穏やかな状態の場所に戻れます。
速い流れに巻き込まれると驚いて流れに逆らって泳ぎがちですが、頑張って流れに逆らいすぎた結果力尽きて溺れてしまうというのが離岸流による事故の代表的な原因のようです。
万が一離岸流に巻き込まれたら、流れに逆らって泳ぐのではなく横に向かって(流れに垂直に)帯状の離岸流から逸れるように泳ぎましょう。
また、仮に流れから抜け出すことができず沖に流されてしまっても、沖に行ったからといって何も危ないことはありません(笑)。何となく岸から離れると恐怖感がありますし、何かがいそうで怖い気持ちは分かりますが、普通の人が行くような穏やかなビーチの場合多少沖に行ったとしてもちょっと深くて怖い以外は浅瀬と何も変わりません(もちろん、リーフの外の外洋まで流されてしまった場合や、沖が荒れている海、遊泳禁止の場所は別です。また、少なくとも日本では沖にサメが出るような海はそもそも遊泳禁止になっていると思います)。
沖まで流されてしまった場合、離岸流から逸れた場所を泳いで自力で岸まで行くか、それができない場合はそのまま力を抜いて浮いた状態で救助を待ちましょう。沖であってもそのまま浮いていればいいのです。それに、離岸流はそんなに何キロも流されるわけではないので、数百メートルくらいなら自力で泳いで帰れるのではないかと思います。
そもそも自力で浮いていること自体ができないという人もいるかもしれませんが、シュノーケルを口から外してあおむけになって力を抜けば人間は自然に浮きます(シュノーケルはあおむけになると先端が水に入るため水を吸い込まないように口から外します)。それでも浮くことができない人は絶対に浮き輪を手放さないでください。
離岸流の発生しやすい場所
離岸流は南国では「リーフカレント」と呼ばれていますが、これはその名の通り離岸流がサンゴの隙間で起こりやすいからです。
サンゴ礁は、上空から撮った写真などを見ると岸からギザギザに伸びていることがわかります(サンゴが水路状にえぐれていたり、サンゴ礁に切れ目が入った状態)。このギザギザの窪んだ場所に離岸流が発生しやすいのです。
また、砂浜があるビーチの場合は、上から見ると数十メートルごとに波の形が変わっているところがあります。岸に向かって打ち寄せる波が途中で切れているようになっていて、沖に向かって筋が伸びた状態です。ここが離岸流の発生ポイントと言われています。
こういった場所にはなるべく近寄らないことをおすすめします。ただ、こうなっている場所も必ず離岸流が発生しているわけではないので泳ぐ前に地元の人の話をよく聞くようにしましょう。
サメがいた時→慌てずゆっくりその場から離れる
海には当然サメのように人に危害を加えうる海洋生物もいます。もし海で泳いでいてサメに会った時はどうすればいいのでしょうか?
答えは簡単です。ホホジロザメやオオメジロザメのような凶暴な大型のサメを除き、小型のサメを見ても特に気にする必要はありません。そのまま気にせず泳ぎましょう。
人を襲うような危険なサメは普通浅瀬には現れないのです。
サメを見つけてどうしても怖ければ、焦ってバシャバシャと音を立てるのではなく(これはサメを刺激するので禁物です)サメから目をそらさずゆっくりとその場から離れれば大丈夫です。サメは夜行性なので昼間積極的に捕食することはありませんし、浅瀬によくいるようなリーフシャークやネムリブカのような小型のサメは餌と間違えでもしない限り自分より大きな人間を襲うことは通常ありません。
いずれにせよ、私は日本のシュノーケルポイント(沖縄など)ではほとんどサメを見たことはありません。タヒチのような場所だとラグーンの浅瀬でもそこらじゅうにいますが、日本ではまず心配することはないでしょう。沖縄でサメを見るのは、ダイビング中や地元の漁師の知り合いに船で連れて行ってもらった人のいない穴場にたまにネムリブカがいるくらいでしょうか。
ただし、危険なサメが出没して実際に事故が起こったビーチもあるので(宮古島の砂山ビーチなど)、サメの情報は事前にしっかりと調べるようにしましょう。年老いて狩りの力が弱まったホホジロザメなどが浅瀬で観光客を狙う事例もあるので、そういう海には地元民は近付きません。海の情報はその土地をよく知る地元の人から聞くようにしましょう。ですが、世界のサメによる死亡事故はこの10年間は年間6件程度しか起きていないので(Wikipedia参照)、よほどのことがなければ大丈夫です。
なお、この記事をご覧になっている方の中は、夏休みのリサーチをしている人の他にも2022年7月に起こった「遊☆戯☆王」の作者高橋和希さんの沖縄での死亡事故のことを調べて辿り着いた方もいるのではないかと思います。
高橋さんは腹部がサメに噛まれたように損傷していたことから当初サメに襲われて亡くなったのではないかとの見方もありましたが、その後死亡解剖を行ったところ溺死だったことが判明したとのことです。つまり、サメに襲われたことによって亡くなったのではなく、溺れたことが直接の死因だったということです。サメに噛まれたのは亡くなった後だったということですね。恐らく、死後沖合を漂流している間にサメの餌食になってしまったのでしょう。どちらにせよ不幸な事故ですが、2022年7月に沖縄でサメによる死亡事故が起こったわけではないということなので、その点だけは安心していいと思います。
なお、上の写真のサメはブラックチップシャーク(ツマグロ)と呼ばれており、日本にはまずいません。パラオやタヒチなど日本より南の海にはどこにでもいますが、ビーチを歩く人間の足を餌と間違えてたまにかじる以外は大人しいサメです。
水着がサンゴや岩に引っかかった時→焦らずに取るか最悪脱ぐ
南国だと、複雑なサンゴの地形を潜っていてサンゴに引っかかることはよくあります。サンゴでなくても、水面で自分のシュノーケルが別の人に引っかかってしまったり、ラッシュガードがどこかに引っかかることはあり得ます。
そんな時は、潜っていない限りは息ができるということを思い出して冷静になってください。
引っかかったという事実だけでパニックになる人もいるかもしれませんが、水面にシュノーケルを出しているなら常にそこから息をすることができます。何かに引っかかってしまっても、焦らず落ち着いて取り外すようにしましょう。
また、もしもスキンダイビング(息を止めた素潜り)中にどこかに引っかかってしまった場合は、息ができないので焦ってしまう気持ちもわかります。
この場合も、焦ると余計に酸素を消費するので焦らず落ち着いて対応しましょう。
もしスキンダイビングをしている途中に水中で水着やラッシュガードがサンゴなどに引っかかった場合、そのまま息を止めて落ち着いて引っ掛かりを外します。どうしても外れない場合、最悪引っかかった水着を引きちぎるか脱いで水面に上がってください。
このような状況を避けるには以下の心がけが必要です。
- 引っ掛かりそうな水着やラッシュガードは着ない(ヒラヒラと紐やリボンがぶら下がっているようなものではなく体にフィットしたものがおすすめ)
- スマホケースのような引っ掛かりやすいものは首からかけない。どうしてもかけたい場合水着やラッシュガードの中に入れる
- 泳いでいるだけでもサンゴに当たりそうなほどの浅瀬では泳がない
- 引っかかりそうな複雑な地形の場所でスキンダイビングしない
急病の発作が出た時→常にバディに見てもらって助けてもらうしかない
海での水難事故には、シュノーケルに水が入るなどの原因でパニックになる以外に、自分では防ぎようのないトラブルがあります。それは急に何らかの病気の発作が出て意識を失ってしまうことです。海での水難事故のうち、一定の割合は病気の発作で動きが取れなくなってしまったことが原因なのではないかと思います。
特に高齢者の場合、普段健康だと思っていても海で泳いでいて突然発作が出ることもあります(それで亡くなった上級スキューバダイバーも多数います)。泳いでいる間に発作が出てしまうと自分ではどうにもできないので、海で泳ぐ時はやはり必ず家族や友人などすぐ近くで自分の動きを見ることができる人と一緒に泳ぐようにしましょう。若い人の場合発作の心配はあまりありませんが、中高年は注意が必要だと考えた方が安全です。海に行く時は1人では行かない、これが鉄則です。
事故を防ぐために上級者がやっていること
海での事故は上級者でも100%避けることはできないものですが、それでも心がけやスキル次第で事故の確率を下げることはできます。
では、上級者はどうやって事故を防いでるのかご説明します。
地元の人が危険だという場所や遊泳禁止の場所では泳がない
遊泳禁止の場所や、地元の人が危ないという場所には必ず理由があります。中には幽霊に引き込まれるなど一見根拠がない噂で地元の人が近寄らない場所もありますが、そういう場所も本当の原因は幽霊ではないにしても必ず波や流れなど何らかの自然的な要因があって事故が起こっているはずなので、そういう場所では泳がない方がいいです。私も心霊現象は積極的に信じてはいませんが、実際に事故が起こっている場所はそれなりに理由があって事故が起こったはずなので泳ぎません。
また、外から見てどんなに穏やかできれいそうでも、地元の人が近寄らない場所には必ず過去の経験から何か近寄りたくない理由があるはずです。それをバカにして、土地のことを何も知らない観光客が遊泳禁止の場所で泳いで事故に合う事例は毎年必ず何件もあります。
もちろん、初心者には危ないけど泳ぎの技術があれば大丈夫などの場所もありますが、その場合も具体的に何がどのように危なく、過去の事故はどのような原因だったのかしっかりと把握していない限りは泳がない方がいいでしょう。
台風の直後などで荒れた海で泳ぐのも同じです。毎年必ず何人か事故に遭っているので、危ないと言われている場所や危ない状態の海で泳ぐのはやめましょう。ライフセーバーでもそんな海ではほとんど泳がないのに、何のスキルもない素人がそんな海で泳ぐのは文字通り自殺行為です(プールで泳ぐのが得意なのとは意味が違います)。
一人では泳がない
基本的には、上級者であっても可能な限り一人では遠出したり深場で潜ったりはしません。常にバディと一緒に泳ぎお互いの安全を確認し合います。
たまに、何分も息が続くのでたとえ急流に飲み込まれたり水中で洞窟から出られなくなっても自分1人で対処できるという超上級者もいますが(私の知り合いにもいますw)、そういう特別な人以外は上級者であっても1人で潜ったり遠出することは避けるに越したことはありません。
浅瀬のビーチで泳ぐ分には離岸流がない限り1人でも普通は問題ありませんが、沖でスキンダイビングをする場合や島一周といった遠出をする場合には1人で泳ぐのは避けましょう。初心者の場合、浅瀬のビーチでも1人はやめた方がいいと思います。
自分のスキルを過信しない
最後に、シュノーケリングをする上でパニックにならないことに次いで大切なのは自分のスキルを過信しないということです。
危険な目に遭ったことがない人やプールでの泳ぎが得意な人、これまで浅瀬で泳いで大丈夫だった人は「自分は大丈夫」と思いがちですが、何がどう大丈夫なのか考えたことはあるでしょうか?「泳ぎが得意だから」だけでは不十分ですよ。波も何もない浅いプールで泳げるのと、気象や地形など様々な要素が絡み合う海で泳げるのは全く意味が違います。
大丈夫だと言い切れるのは、今の海況(波の荒れ具合や流れなど)をしっかりと把握した上で仮にそこで泳いで何かあっても自分の泳力なら岸に戻れることがはっきり分かっている場合、トラブルがあってもどう対処するかが頭の中で詳細にシミュレーションできる場合、そしてそれを具体的に人に説明できる場合などです。
この人に説明できるというのはけっこう重要で、自分の土地で事故が起こったらどうしようか不安に思っている地元の人に安心感を与えるのと同時に、人に説明することで自分自身の頭の中も整理できて何か起こった時にも冷静に対処しやすくなります(ただ、それ以前に地元の人が危ないというような場所では泳がないのが鉄則です)。
これができない漠然とした「大丈夫」こそが過信であり、事故の原因になるのです。
まとめ:とにかく焦らない。自分の泳ぎを過信しない。
いかがでしょうか。シュノーケル中の事故は、よほどのことがない限り自分で防ぐことができるということがお分かりいただけたなら幸いです。
とはいえ、こうして文字として読んで頭に入っても、実際にその状況になると人間焦ってしまうものです。
このため、上で書いたような状況について「自分はこの状況になっても実際に対処したことがあるので大丈夫」だと実体験を通して言えるほどの経験値を得るまでは、自分の泳ぎを過信せず実力相応の場所で泳ぐことをおすすめします。なぜなら、経験をしたことがないことに対して自分は大丈夫だと言い切ることは不可能だからです。命に関わることなので、一件でも事故を減らすため是非頭の片隅に入れておいていただければと思います。
ちなみに、私自身もシュノーケリング中の離岸流は経験したことがないため(急流の中をシュノーケリングしたりダイビング中にダウンカレントに遭遇したことなら何度も有り)、いざその状況になった時に自分が焦らず対処できるかどうか100%の自信はありません。経験していないことを大丈夫だとは言い切れないないためです。また、たとえあらゆる状況を経験したことがある上級者でも場合によってはパニックになってしまうことがあるそうなので、常に油断は禁物です。
海は楽しい場所であると同時に怖い場所でもあるのだということを常に頭に入れて海水浴を楽しんでいただければと思います。
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